鏡が好きな文鳥、嫌いな文鳥

文鳥×心理学

鏡を愛でる文鳥 vs 鏡を拒む文鳥

よく「文鳥は鏡が好きで、うっとりと自分を見つめる」なんて言いますよね。ペットショップでは、小鳥用の鏡がついたおもちゃを見かけると思います。

ケージの中に鏡のおもちゃを入れているお家も多いですし、うっとりと見つめたり、鏡の中の自分に歌ったり、寄り添って寝てしまったりする文鳥の姿は、鳥飼いの人にはお馴染みの光景かもしれません。

しかし、わが家の文鳥カノンは正反対です。鏡を見せた瞬間、表情を変えて「ガルルル!」とものすごい勢いで怒りを表します。止まることなく、鏡に向かって攻撃します。

この「うっとり派」と「激怒派」の違い、実は単なる好き嫌いではなく、鳥類心理学や認知科学の視点から見ると非常に興味深い現象が隠れていたのです。

今回は、鏡が好きな文鳥と嫌いな文鳥の違いはどこから来るのか?について深堀りしてみました!

認知の壁「鏡像自己認識」という限界

心理学の分野では「鏡像自己認識(マークテスト)」と呼ばれるものがあり、鏡の中の自分を自分と認識できるかどうか?というものがあります。文鳥にはその認識はないと言われています。多くの鳥類にとって鏡に映る自分の姿は、「自分と全く同じ動きをする、別の個体」に他なりません。(ちなみにカササギは鏡の中の自分を認識できるそうです!ご興味のある方は→日経サイエンス「もうトリ頭とは言わせない 解き明かされた鳥の脳の秘密」

では、なぜ「うっとり」と「激怒」に分かれるのでしょうか。ここには「社会的促進」と「テリトリー意識」という二つの心理的要因が関わっています。

社会的促進(Social Facilitation)
「うっとり派」の子は、鏡の像を「友好的な同居人」や「魅力的な求愛対象」と誤認しています。鏡を見ることで「仲間がいる」という安心感を得ている状態です。
同調攻撃(Synchronized Aggression)
一方、カノンのような「激怒派」にとって、鏡の像は「自分の縄張りを侵犯する厚かましい侵入者」です。さらに、鏡の像は「常に自分と完璧に同期して攻撃してくる」ため、「なんて生意気な奴だ!」と闘争心に火がついてしまうのです。

消えた「あいつ」を探すのは、知能が高い証拠?

カノンは時折、鏡の裏にまわって鏡の中にいたはずの敵を探す行動をします。実はこれ、心理学では「物体の永続性」という高度な認知能力に関係しています。

簡単に言うと、「目の前から消えても見えなくなっただけで、どこかには存在し続けているはずだ」と理解する力のことです。

生後6か月未満の人間の赤ちゃんは、おもちゃをタオルで隠すと、興味を失います。「見えない=無い」と認識するからです。それが生後6~11か月頃になると、タオルで隠したりしたおもちゃを探し始めます。1歳前後にこの概念が獲得されるそうで「隠されているだけだ」と気づくのです。これが「物体の永続性」です。カノンが鏡の裏側にまわって確認しに行く行動は、まさにこの「隠れているだけ」という概念を理解している証拠です。これは、人間でいえば、1歳前後に獲得される認知能力と重なるものだと言われています。

さらに、この行動はカノンの性格の現れでもあります。「裏に潜んで不意打ちしてこないかな?」と確認しに行くのは、彼がとても慎重で、自分の縄張りを守る責任感が強いタイプだからではないでしょうか。

カノンにとって、鏡の相手が急に消えるのは「未解決事件」のようなもの。「あいつ、どこへ逃げたんだ?ちゃんと追い出したか確認しなくちゃ!」というパトロール隊長のような心理が、鏡の裏側へのチェックに繋がっているんですね。

余談:多頭飼いという選択肢について

こうしたカノンの心理分析を続けていると、数年前に私が悩んだ「もう一羽お迎えするかどうか」という問題の答えも見えてきます。

当時、ギリギリまで多頭飼いを検討しましたが、最終的には断念しました。今思えば、この「鏡への激しい敵意」は、彼が「他者との共存」よりも「飼い主との独占的な関係」と「自分の完璧なテリトリー」を重視しているというサインだったのでしょう。

「多頭飼いの方が刺激があって良い」とか「長生きする」という一般論も、カノンのような縄張り意識が強い性格タイプには、かえって過度なストレスを与えていた可能性もあります。

【まとめ】鏡は「心」を映し出す

文鳥にとっての鏡は、自分の姿を映す道具ではなく、その子が持っている「社会性」や「性格の攻撃性」を抽出するリトマス試験紙のようなものですね。

うっとり見つめるのも、全力で怒るのも、どちらもその子の個性が導き出した「正解」の反応です。

皆さんのおうちの文鳥さんは、どちらでしょうか?

私は、鏡の前で「今日はこれくらいにしといたるわ!」と引き下がり、私の手に戻ってきてリラックスするカノンを見ていると、彼にとっての世界は今のままできっと満たされているのだと思えました。

【おまけ】鏡のポジティブな活用法

「文鳥×心理学」のブログですので、ここで人間にとっての鏡について、少しだけ。

私たち人間は鏡で自分の姿を映し、身だしなみを整えたり、服を選んだり、表情を確認したりしますよね。

実は鏡は、それ以外にも活用法があるんです。

皆さんは、鏡の中の自分に向かって「大丈夫」とつぶやいてみたりしたこと、ありませんか?

鏡を見ると人間は「自分を外側から見る視点」が発動します。これを「客観的自己認識」といいます。

例えば・・・

①何かちょっとずるいことをしようとしたとき、ふと鏡に映った自分が目に入ると、他者に見られている自分を認識し、心にブレーキがかかります。

②パニック状態に陥っているときや、緊張状態にあるとき、鏡に映った自分を見ることで、冷静さを取り戻しやすくなります。

③鏡に映る自分と対話することで、もう一人の自分が自分を励ましたり、セルフメンタルケアができます。

鏡を見ると他者と認識してヒートアップしてしまうカノンですが、私たちは鏡を見ることで冷静になれます。

鏡に映る自分を、「自分」だと認識できるからこそ、私たちは一歩引いた視点で、自分を律することができます。でも、鏡の中の自分を「本物の敵」だと信じて全力で立ち向かうカノンを見ていると、時に周りがどう思うかよりも、「自分を信じ抜く力」を見せつけられている気もしたのでした。

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